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2009.01.22 Thursday

無人島問題に操られると

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    タケルンバ卿日記

    ある夫婦、その妻に思いを寄せる男性、この3人とは何の関係もない男性、おじいさん。この5人が乗っていた船が難破し、無人島に流された。

    その過程で、夫婦の夫は行方不明となり、島に流れ着いたのは4人だった。この時点で夫の安否はわからない。

    夫の安否を確かめるには、船を出して捜索するしかないが、妻には船をつくる能力や、直す力はない。船をつくり、直すことができるのは、夫婦とは縁もゆかりもない男性ただひとりだった。

    妻はその男性に頼んだ。「船を直してください。夫を探したいのです」と。

    男性は直すと言った。だが、条件をつけた。その条件とは妻と一夜限りの関係を持つこと。

    妻は悩み、おじいさんに相談した。おじいさんは「気持ちのままに行動しなさい」と。

    妻は結局、その男性と関係を持った。男性は約束を守り、船を直した。

    そして船が直り、これからまさに夫を探すというときに、夫が無人島に自力でたどり着いた。

    妻は夫に、捜索するため、船を直すために男性と関係を持ってしまったことを告白した。

    夫はそんな妻を許さなかった。不貞であると。

    夫婦は破局した。

    ひとりになった妻の様子を見て、思いを寄せていた男が言った。「あなたが好きです」。

    という問題があって、
    皆さんは誰が悪いと思います?

    と、問いかけている。
    答えは、
    みんなの頭が悪い。
    で、いいと思います。
    というか、出題した奴が悪い。

    出題が悪いですませればいい。
    状況設定に無理があって、それ以外の選択肢を試行しないことがもっとも悪い。悪いのに、それを言わせないように設定だけ強引に推し進めて、ピントの外れた困った質問をする。
    誰が悪い?とか問うてる状況じゃねぇだろ。

    こういうのを仕事の研修で使って、真剣にディスカッションしているという図は、その企業のありようが透けて見える。
    出題者、つまり企業側が提示したことには、その提示内容そのものに間違いや無理があっても、考えて、行動しなさい。提示内容に疑義を申し立てることは認めぬ。
    考えて、行動した結果、提示内容にそもそも無理があったから失敗したのであっても、企業側じゃなくて、あなたたちの中から「悪いのは誰か?」を見つけ出しなさい。
    出題者の責任や、出題内容の責任に関しては、疑うことを禁ずるという場の雰囲気を作り上げているから成り立つ、もしくはそれを作り上げるための問題ではないのか。

    こういった問題に答え続けていると、思考停止するクセがついてしまう。
    「問いに対して答える」という強制が浸透すれば、(黒幕にとって)教育完了だ。

    マジック漫画ベスト1でしょの傑作杉本亜未『ファンタジウム』2巻(→『ファンタジウム』感想)に、マジックのテクニックとして“相手に選ばせるように見せかけて その実拘束している”方法が紹介される。
    マジックショップのおやじが「コーヒーにするか? 紅茶にするか?」と問うて、他の選択肢を選ばせない実演をした後に、こう語る。“飲み物は何がいい?と訊いてはいけない。それでは多数の選択肢を相手に与えてしまう。販売や詐欺の手口にも使われる方法だな− 二つの条件の内どちらを選んでも選ばせる側に好都合にできてるもんだ。”
    こうやって、どんどん選択肢を狭めて誘導してしまえば、誰だって、とんでもない困った状況に追いやられてしまう。そこから抜け出す方法はひとつだ、悪い「問い」に対して答えてはいけない、問いに対して問いで返さなければならない。

    いまから大事になってくるのは、「教える側→教わる側」という一方通行にならない場の雰囲気だ。講師側の言動に対して、受講者がどんどん介入でき、どんどん疑問を投げつけることができる「インタラクションの場」を作ることが大切だ。

    ■本
    デイヴィッド・アーモンド 『肩胛骨は翼のなごり』天使だけどふわーっと夢っぽい存在じゃないリアルな、でも、とても素敵な話、大傑作なのでタイトルが気になる人は読むべし。文庫化。

    ■きのう
    某若者と打ち合わせ。楽しそう。
    某テレビの取材。テレビって、取材者じゃなくて、カメラに向かって話すことになるので、不安になってくる。カメラに向かって話すときって、モードを切り替えないといけないなー。
    「夜のゲーム大学2」(→「夜のゲーム大学2」来てね)の宣伝文できたので宣伝しなきゃー。
    コメント
    こういうの学校の授業でやりました。少し違ってはいるけれど大体同じように思います。
    夏目漱石の「三四郎」の授業のときに先生が、心理テストとして(お遊びで)やったものです。

    M夫とL子は恋人同士で、橋で隔てた村におのおの住んでいました。ある日橋が壊れてしまって、M夫とL子は会えなくなってしました。M夫に会いたいL子。向こうに渡るには船で行くしかないのですが、唯一船を持っているのがB夫で、お金をくれなきゃ乗せてかないよ、と言います。L子は残念なことにお金がありません。そこへS夫がやってきて、俺と付き合えばお金をやるよと言います。この男は前々からL子に恋してました。L子は会いたいいっしんでS夫と付き合います。そして船に乗りM夫に会うことができましたが、M夫はそんな女とは付き合えない、別れようと言い、分かれてしまいました。それを見たE子。実は前々からM夫が好きだったのだが友達であるL子と別れたのをチャンスだと思いM夫に告白します。

    好きなキャラクター順に並べなさい、というものでした。誰も好きになれない…が、あえて選ぶ。
    無意識の価値観を見るものらしいです。

    因みに私は、MEBLSでした。それぞれ意味があっって
    B=仕事・ゴーイングマイウェイ E=古風な人、昔ながらの人 M=正悪を大事にする・モラルを守りたい人 L=愛を大切にする S=性を大切にする
    お遊び程度の心理テストならこういうの楽しめると思うのですが、ディスカッションでするものではないなぁ〜、と思いました
    • 森チョコ
    • 2009.01.22 Thursday 16:54
    「問いに対して答える」という強制の浸透、ということを追求していって物語化すると、『ダークナイト』や伊藤計劃の『ハーモニー』のような作品が出来上がるのかも、と思いました。
     また選択肢を狭めて誘導、という点はちょっとAmazonの「こちらもどうぞ」の在り方にも似ていますね。ディストピア風な言い方だと「あなた達には幸福になる義務がある」というような感じの誘導の仕方で。
     
    • マコト
    • 2009.01.25 Sunday 01:11
    そう、心理ゲームなら、まあ、こういう無理な設定でも(というか無理な設定だからこそ)楽しめるんだよね。
    伊藤計劃『ハーモニー』未読。いろいろ聞いてると、読まなきゃ!って感じの内容なので、とても気になってます。
    • 米光
    • 2009.02.02 Monday 02:30
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