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2008.10.25 Saturday

杉本亜未『ファンタジウム 1』感想

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    杉本亜未『ファンタジウム 1』
    「人に響く何かを人は常に必要としているんだ!!」とすぐ熱血してしまうと同時に「俺の毎日って一体何?」と悩む会社員でもある大人北條英明と、「おじさん……変わってんなーー」とクールではいるが世界を受け入れる準備ができていない少年長見良という対比も鮮明に、ふたりが良き相棒となっていく過程を描くマジック漫画。そう、マジック漫画! 少年、長見良はマジックの才能を持ち、難読症である。

    マジックのタネをキーに使うという展開を封じ、コンテストに出て勝ち抜くという展開も封じる(「うーん 競争するのはすきじゃないけどなー やなんだけどなー」「少年漫画だってそうだろ 男は努力して強くなって敵を倒して上に立つもんだ!!」「そういう攻撃的な発想はどっから来るんだろうね?」)。
    漫画で表現しにくいモチーフを選んだうえに、選んだならそういう展開にするのがキャッチーだろうという方法をふたつとも封じている。にもかかわらず、圧倒的な力強さを持ち得ているのは、戦略として既存の方法論を封印したのではないからだろう。
    深く潜り描きたいことを描いたからこそ、これまでのセオリーに依存する必要すらなくなったのだ。つまり、王道である。
    マジックを通して「表現するとはどういうことか」を真正面から捉えようとしているので、その真摯な漫画表現が胸を貫く。少し生真面目すぎると思えるほどの構成力もそれを支える。#1パームと#3ワイルドカード(毛布にくるまった良を抱え上げると……のシーンとその後)で、うるうるした。傑作。

    サイト:ファンタジウム〜長見良の魔法世界 北條英明が管理人の長見良サイト!!

    余談。
    『ライトジーンの遺産』(傑作!)が再文庫化の神林長平の『七胴落とし』を再読。大人になると感応力を失う世界。心と心で直接意志伝達できる少年少女たちは、その能力を使い死と快楽を弄ぶ。どんだけ暗くて蒼くてカッコいいか! しびれる。
    “文学という名目で、その時間は大人の作家たちが排泄した精子や血だらけの死んだ卵のような言葉の化石を、ひっくりかえし、つつき、さてこの作者はなぜこれを生んだのかなどと教師は生徒に問いかけて、それで時間を腐らせる。言葉で組み立てられる小説や詩は腐った積み木細工に似ている。大人たちが使う言葉はゲームの駒と同じだ。なぜ小説を書くか、だって? 答は、簡単、暇つぶしのためだ。大人たちの世界は暇をつぶすことで成り立っている。そんな大人たちが書くものは、だから暇つぶし以外のなんの実用性もない。ぼくは「まだ大人になりきれないでいる少年」の残した作品なら信じてもいい。精神を、そのままホログラムにして密閉したような世界なら共感を受けるかもしれない。”P8
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