<< ガレージ前に付 | main | 映画の見方に正解などない >>
2008.08.18 Monday

『ダークナイト』と『宇宙人東京に現る』と『ダークマン』と鉄腕アトムと

0
    『ダークナイト』観た。いやー、すごかった。
    最初の15分の猛スピード、細かいドンデン、刺激満載、怖い怖い、で、ぐいぐいっと引き込まれる。引き込まれると、全編もう刺激過多で猛スピードで二時間超える映画なので、見終わった後、どっと疲れるぐらいの大活劇。

    内容は、中二男子理屈映画なので、中二脳にモードチェンジして、まとまりもなくあれこれ書くっす。

    世界を混乱に陥れる悪ジョーカーは、事情も目的もなくて、純粋な悪として存在する。事情を想像したり、事情を考えたり、事情を知ったりすることは、最初から排除されるべき存在として巧妙に設定される。ジョーカー側に事情があっては困るからだ。
    どうしてかというと、ジョーカーは、アメリカが考える世界の平和を混乱させている国々の象徴だからだろう。実際のフセインではなく、報道されていた時点でアメリカが妄想した巨悪フセインのような人を象徴しているからだ。このことは、作中でも「ビルマ(ミャンマー)の盗賊」というたとえ話で露骨に示される。
    で、ジョーカーによって混乱したゴッサムシティは、どんどん犠牲者を出す。
    「バットマンのせいで警官や市民が死んでいく」「バットマンがやってるのは暴力制裁で私刑である」と市民や警察がバッドマンを批判するのは、アメリカが、今回の戦争で批判されている状況を連想させる。
    そして、映画はどう終わるのか。

    詳しくは観てもらうしかあるまい。
    ああ、日本が戦後に作った怪獣映画のようだ。
    岡本太郎が宇宙人(パイラ星人)をデザインした『宇宙人東京に現る』で、宇宙人はメッセージを伝えるために「核被害国日本」を選び、「地球を救うのは日本しかない」と宇宙人が言う。新天体Rが地球に衝突するというので日本人は何故か疎開する。アメリカの原水爆で世界を救う計画は失敗し、日本人が発明した爆弾で世界が救われる。という物語は、やはり今見ると、なんて夢のような願望が詰まった展開なんだ、と思わざるをえない。
    『ダークナイト』がアメリカで大ヒットしたのは、この映画で描かれる正義に対する壮大な言い訳がアメリカ人にとって切実に必要だからだろう(全米興行成績、『STAR WARS』を抜いて歴代2位になるであろう国民的大ヒット。なぜこんなにダークな映画が国民的大ヒットになっているのかって議論が巻き起こってるほどだという)。
    今回の戦争で自分達は間違っていたのかと罪悪感をうっすらと抱いている人間は、この壮大な言い訳に共感し、すっきりして映画館を出るのだろう。

    多国籍軍がイラクを空爆するのが1991年。その1年前、1990年にサムライミ監督の『ダークマン』というアメコミテイストのヒーロー映画がある。
    ダークマンは、高所から落下しそうになった悪役を助ける。宙づりになったままの悪役が「おまえに私は殺せまい」となじる。というシーンがある。それとまったく同じシーンが『ダークナイト』にも出てくるのだが、言われた後のヒーローの行動は、まったく逆だ。いや、その部分だけじゃない。『ダークナイト』と『ダークマン』は、すべてが対称的な作品になっている。
    あの平和愛好者ぶった鉄腕アトムをみるがいい。口先では、争いはやめてくださいと訴えるふりをしながら、とどのつまりは、よし、ぼくが相手だと大暴力をふるう。毎回、破壊と暴力沙汰の連続だ。ドカンバカンと大暴れしないアトムを見たことがあるか? あの部分だけ技きだしてみれば、可愛らしい顔をした悪鬼外道ではないか。(エイトマンヘの鎮魂歌 平井和正
    『ダークナイト』で、バッドマンは、全市民を盗聴する(大儀のために、それは肯定されてしまう)。
    正義のヒーローは、次に何をしでかそうとしているんだろう。



    余談。
    映画のヒーローや怪獣映画が、時代背景の影響を受けてどのように変わっていったか、ってことを検証している本ってありそうだと思うんだけど、いい本知ってたら教えてください。
    木原善彦『UFOとポストモダン』は、時代背景に影響されてどのようにUFOや宇宙人が変わっていったかを検証したスリリングな本。オススメです(騙されないリテラシを養う5冊:こどものもうそう)。


    余談2。
    映画のタイトル・バックといえば、ソール・バス! なわけですが、そのタイトルバックを集めたDVDが出る、うはー。『ソール・バスの世界』。“ソール・バスが手がけた映画のオープニング・タイトル・バック10作品と、そのメイキングや制作意図をなんとソール・バス本人が解説する「ソール・バスの映画タイトル集」、妻エレインと共同で制作し1968年度アカデミー賞最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したドキュメンタリー映画「なぜ人間は創造するのか」を収録。”
    コメント
    どんぴしゃではありませんが、
    怪獣映画に関しては、別冊宝島「映画宝島 怪獣学・入門!」
    に、ちょっと関係ありそうな内容がありました。

    ・ゴジラは、なぜ皇居を踏めないか?
    ・赤坂憲雄/ゴジラは、なぜ「南」から来るのか?
    ・中島紳介/日本人はなぜ自力で怪獣を倒せないのか?

    日本製怪獣に限定ですが。

    映画秘宝の初期ムックには、SF映画の時代による
    テーマ変遷を語った記事があったはずです。

    どれもこれも倉庫のどこにあるやら…。
    • M&B
    • 2008.08.18 Monday 13:16
    会社休んでも行こうと思っていたのですが、すっかり見たくなくなってしまいました。
    アメリカのいいわけの映画じゃ…(´・ω・`)
    • 2008.08.19 Tuesday 10:54
    M&Bさん、情報ありがとう。
    本棚をあさったら、
    別冊宝島『映画の見方が変わる本』
    山崎浩一「『グレムリン』猿マネ小悪魔に報復を」
    ってあって、かつてのアメリカSF映画のインベーダーは共産主義への恐怖の具象化だったけど、グレムリンは日本人だよね、って解釈。

    | |さん、いや、おもしろいよ! えーと、今の「アメリカ」がどういう気持ちなのかを推測するという意味でもおもしろいすよ。
    • 米光
    • 2008.08.19 Tuesday 12:03
    ところどころ「バッドマン」となっているのが、意図した誤記のようでもあり、単なるミスタイプの様でもあり、趣き深くていいです。
    • ポン子
    • 2008.08.19 Tuesday 12:11
    自分がダークナイトに求めているものは、そういうのはないので、やっぱりやめときます。
    どうもありがとうございました。
    • 2008.08.19 Tuesday 20:45
    誤記指摘ありがとうございます。む、無意識ちゃんが…。修正せずに残しておきます。
    • 米光
    • 2008.08.20 Wednesday 12:01
    いまさらこんにちはです。
    現物を目にしていないのでカンでですが、ウルトラマンに関しては、
    「ウルトラマン画報〈上巻〉光の戦士三十五年の歩み」
    出版社: 竹書房 (2002/09)
    ISBN-10: 4812408881
    が頼りになりそうな感じです。
    他に「ウルトラマン・クロニクル」なんてのがあるようですが、
    ちょっとお値段が張りますね。

    発見しました。
    映画秘宝の「あなたの知らない怪獣マル秘大百科」
    冒頭記事の越智道雄氏インタビュー、「宇宙戦争からID4まで」が宇宙人映画とアメリカの歴史変遷を重ねてて、とても面白いです!
    • M&B
    • 2008.08.21 Thursday 02:35
    おお、たしかに、宇宙人映画も、同様な語られ方がされてそうなジャンルだよねー。

    amazonで『戦争はいかに「マンガ」を変えるか―アメリカンコミックスの変貌』という本があることを発見。
    • 米光
    • 2008.08.24 Sunday 10:50
    コメントする








     
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック
    Calendar
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    293031    
    << October 2017 >>
    Selected Entries
    Categories
    Archives
    Recent Comment
    • 文章を書いたらチェックしたい17の項目改2
      米光 (06/13)
    • 「キングオブワンズ」またも復活
      頼鳥 翠 (02/20)
    • 『魔導物語』20周年記念メモ
      /Tachesci (11/23)
    • 「アンチオレンジレンジ」サイトが「オレンジレンジファン」サイトになってる理由
      x hot アイアン (08/13)
    • 発想力トレーニング講座「想像と言葉」
      おやつ (06/22)
    • 宣伝会議編集ライター講座上級コース第7回目
      米光 (04/28)
    • 宣伝会議編集ライター講座上級コース第7回目
      通りすがりA (04/27)
    • 偶然を味方につける
      う。m (03/17)
    • 「人生は神ゲー」と考えてみるゲーム(ゲーミフィケーションについて3)
      もやし (01/22)
    • 日本公式萌えキャラ「ひのまるこちゃん」とか作ればいいんじゃないか。
      笹 (06/17)
    Recent Trackback
    Recommend
    自分だけにしか思いつかないアイデアを見つける方法―“企画の魔眼”を手に入れよう
    自分だけにしか思いつかないアイデアを見つける方法―“企画の魔眼”を手に入れよう (JUGEMレビュー »)
    米光 一成
    “「ぷよぷよ」を作った人気ゲームクリエイターが、若手育成カリキュラムの中から生み出したトレーニング法を公開!”
    Recommend
    仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本
    仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本 (JUGEMレビュー »)
    米光 一成
    「楽しいプロジェクト型」で仕事を楽しくデザインするための攻略本。
    Links
    Profile
    Search this site.
    Others
    Mobile
    qrcode
    Powered by
    30days Album
    無料ブログ作成サービス JUGEM