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2008.03.26 Wednesday

ソニー銀行「人生通帳」、「ゲーム感覚」とはどういうことか

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    ソニー銀、新サービス 「人生通帳」 ゲーム感覚で資産管理:FujiSankei Business i
    開発にあたっては、人気ゲームソフト「ぷよぷよ」を開発したゲームデザイナーの米光一成・立命館大学教授からデザインや機能のアドバイスを受けた。同教授は「利用者を夢中にさせるような、分かりやすさを重視した。サービス開始後もさらに分かりやすくしていきたい」と話した

    というわけで、26日からソニーバンク「人生通帳」のサービスがはじまるよ。
    アドバイザーという立場で、会議に出たり、ここはボタンじゃなくてスライドバーだよって言ったり、テストプレイして改善点を列挙したり。いろいろ協力しました。

    ゲームを遊ぶみたいに、簡単にはじめられて、楽しく続けられて、いつのまにか金融リテラシーが身につく、というのが理想。
    今回は、その第一歩です。
    理想に近づけるように、ぼくも微力ながら今後もお手伝いしていくつもりです。

    「人生通帳」の発表会に出て、「ゲームのように手軽に楽しく」というゲームニクスという発想とはどういうことかを話してきた。家にあったビデオのリモコン(ボタン50個超)と、携帯電話のマニュアル(500頁超)を小道具に持っていったよ(18日)。

    もうひとつ「アカウントアグリゲーション」というキーワードがあって、そちらはNTTコミュニケーションズの駒走聡昭さんが解説。いろんなところに口座情報が散らばっていて、いっぺんに把握できないのはとてもめんどうだから、口座情報をまとめて一覧できるようにしましょ、ってこと(だと思う)。
    「人生通帳」では、110を超える金融機関などの情報を一覧できたり、JALやTSUTAYAや楽天などの20を超えるポイントも同様に一覧できて、管理・交換シミュレーションができたりもする。
    ゲーム的に言えば「必須情報は一箇所でまとめて見ることができるように!」って当たり前のことが、ようやく実現しようという流れになってきたわけだ。これは、とても便利なことだと思う。

    発表会での担当時間は五分ということだったので、ひさしぶりにパワーポイントを使わずに喋りました。
    「ゲームニクス」がサイトウ・アキヒロさんの造語で、“ゲームに隠されている「人を夢中にさせる」ノウハウを抽出して理論体系化したもの”という意味だ、と説明した後にリモコンとマニュアルを小道具に、以下のような話をしました(って、メモがどこかいってしまって、記憶をもとに書いたので、細部は違うものになってるけどね)。
    米光一成です。ぼくは「ぷよぷよ」などのゲームのディレクションをしたんですが、「ぷよぷよ」遊んだことがある方。(何人かの手が挙がる)ありがとうございます。
    その中で、マニュアルを読んだ方は…………。いませんね。
    そうです。マニュアルを読ませるようなゲームはダメなんです。
    「何も知らないこどもが最初の10分で夢中にならなければ、そのゲームはダメだ」と先輩から言われたことがあります。
    ゲームというのは、遊ぶためのもので、生活の必要に迫られてやりはじめるものではない。ので、つまらなければ、すぐポイっと捨てられてしまう。わからなければ、それ以上やりつづけない。
    「マニュアルを読んでやろう」なんて思ってくれるのは、まれなことです。
    携帯電話なら、使わなければとても不便な世の中になってきたので、がんばって使ってくれます。自分の携帯電話のマニュアルを持ってきたのですが(取り出す)、500ページ超えてます。
    ゲームは、こういったマニュアルなしで、簡単にはじめられて、すぐに楽しめて、操作性や機能を、その楽しみの中で教えていく工夫をしなければ、誰も遊んでくれなかった。だから、「簡単にはじめられる」ノウハウが蓄えられているんです。

    (リモコンを取りだし)うちのビデオのリモコンです。今ごろ妻が「テレビが見れない」って騒いでると思います(笑)。
    来る途中、電車でボタンの数を数えたら、36個あった。36個かと思ったら、ここがスライドして16個またボタンがあった。合計52個もボタンがある。どれが、なんのボタンかわからないです。
    本当なら、これ、最初はボタン1つでいいんです。スイッチをオンにするボタンだけでいい。ここに大きくオンのボタンがひとつついてればいい。それを押すと、電源がオンになって、その後、にょきにょきっと次に必要なボタンが3つ出てくればいい。そういうふうにボタンが増殖するシステムになっていれば、ボタンを押しているうちに使い方がわかる。
    シンプルになってることが、大切なんですね。
    ボタンに対する信頼性につながるんです。
    自分に必要なボタンがわかって、押してみようと思わせる。
    たくさんボタンがあるとどれを押せばいいんだろう、と不安になる。でもそれが1つだったら、どういうボタンであるか、推測できる。わかることは安心です。押してみようか、と思う。やる気にさせる、行動させる工夫です。
    ゲームは、やる気にさせる工夫をたくさん詰め込んでいます。「ゲームにハマる」とよく言いますが、「もっとやってみたい」と思わせることがゲームの楽しさにつながるので、そうなるようにさまざまな工夫をしているのです。

    簡単にはじめられて、もっとやってみたいと思わせる。そうやってハマってるうちに、こどもは、そのゲームのルールや仕組みを理解していきます。どうすれば勝てるか、どうすれば次へ進めるか、どうすれば上手くいくかが、わかってくる。わかっていくように導いているんですね。そのように作っているんです。
    小学生のこどもが、ポケモンカードで遊んでたりしますが、あれ、そうとうルール複雑です。勝とうと思えば、確率を理解したり、カードに書いてある文章をしっかり把握したり、戦術を立てる力を要したり、そうとうたいへんな知恵が必要になってます。
    「シムシティ」という町を育てるゲームがあるんですが、それをプレイすると、町の仕組みが、理解できるんですね。「信長の野望」が好きだから、戦国武将については、学校の先生より詳しいというこどももいます。
    そういうふうに、ゲームを通して、何かを学ぶ、ということが可能なんです。
    勝間和代『お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践』がベストセラーなので、読んでみたのですが、金融リテラシーを学びなさいって書いてありました。でも、学ぶのはたいへんですよとも書いてあった。
    たいへんなのはイヤです。
    そういうときに、ゲームみたいに、簡単にはじめられて、楽しく続けられて、どんどんやってみたい、と思えれば、たいへんじゃなくなる。そういった中で、いろんなものが学べるといいと、ぼくは考えています。もちろん金融も、そうやってたいへんな思いをしなくても、学べるといいなーと考えます。
    そして。「人生通帳」が、そういうふうなモノになると、ぼくは考えます。
    たとえば「お金マップ」には、自分の資産が図示されます。ここの数字を変えると「円高が進むと資産がどのように変化するか」が、パッとわかる。こんどは、こっちを変えてみよう、そうすると連動して何が変化するか、どうなるかが、パッとわかる。
    実際の自分のお金がどうなるか。
    それが、ゲームのように、簡単にはじめられて、楽しく続けられて、パッとわかる、そういったなかで、金融の仕組みがわかってくる
    「人生通帳」は、そのための第一歩だと考えています。
    人生通帳
    新・お金管理ツール「人生通帳」は、2008年3月26日(水)からスタート。ソニーバンクに口座を作れば、使うことができます(公式)。

    あ、あと、リモコンのネタは、三谷幸喜さんが「チューボーですよ!」に出演したときにクーラーのリモコンをポケットに入れてきたってやってて、それを真似しました(『いらつく二人』『三谷幸喜のありふれた生活6 役者気取り』が出たね)。

    ■関連
    サイトウ・アキヒロ『ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則』


    サイトウ・アキヒロ、小野 憲史『ニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わる』


    米光一成『仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本』
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    [ぷよぷよ][社会][ゲームデザイン]人生通帳についてのメモ
    http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200803190033a.nwc http://blog.lv99.com/?eid=777173 これやるためだけに口座を作るわ 一部で話題のシリアスゲームに近い 「ゲーム感覚で〜する」というキャッチが流行っているのかしら
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