2008.01.14 Monday
貸し本版を原作とした元祖鬼太郎のテイストをおしゃれに映像化。主題歌は電気グルーブ『モノノケダンス』、エンディング曲が中川翔子
アニメもいいんだけど、この貸本版鬼太郎は、原作の漫画が凄い。
もともとが紙芝居のキャラクターで、水木しげるは「空手鬼太郎」(なんて妄想がふくらむタイトルか!)という紙芝居版も制作している。
1959年、水木しげるが貸本漫画として描いた「幽霊一家」に鬼太郎が登場。その後も貸本漫画として描かれた鬼太郎を集めたのが、『貸本まんが復刻版墓場鬼太郎1』だ。
これがめっぽう面白い。
今の漫画文法と、とてつもなく異なっていて、読んでいると一拍ずらして演奏されてる曲に気持ちをゆだねているときのようなよさがある。
“なんというおそろしい宿命だろうか 僕は幽霊の子をそだてねばならなかった”からはじまり、コマ毎に微妙に予想を裏切られる展開は、ただのデタラメではなく(ただのデタラメなら予想できなくなるので予想を裏切られる快感はすぐになくなる)、文化が完全に違う国の寓話を読んでいる、だけど確実に日本の漫画だ、という奇妙な体験だ。
真夜中に近所の古寺に引っ越してきた者の挨拶があり、だが声はすれど人はおらず、置きみやげをひらくと、箱にはひとつ目玉があるだけ。「おお気味の悪い」と言いながら、何故か外へ出て、何故か「うめてしまおう」と埋めはじめる。結構深い穴を掘るが、次のコマでは箱は埋められず放置されているように見える。「この真夜中に……」「まったく」「気味の悪い話だ」と語りながら三コマも使って歩く主人公。
いきなり、奇怪なテンポ、突飛な行動、奇妙な世界なのだ。
何ページか進むと、章タイトルが出てくるのも、いい。
“そのあけ方”とか“その日の真夜中のことである”とか“よし こうなったら てってい的にあとをつけてみよう”といったナレーションが、コマの外、ページの柱のところに書かれるが、それも徹底していなくて、今の漫画のようにコマ内で処理されていることもある。
一番好きなコマは、逃げる主人公に、幽霊お父さんが「お土産をもってかえって下さい」と追いかける次のコマ(P67)。
包帯だらけの幽霊お父さんが襲いかかるように手を伸ばし、主人公の男が逃げている。でも台詞は、幽霊お父さん「まあ遠慮なさらずに」、主人公「けっこうです」。このコマはいくら眺めても飽きない。ポスターがほしい。
逃げる前、イナバウアーのポーズで「助けてくれーっ」って叫ぶ主人公も素敵だ。
残念ながら、アニメ版の「墓場鬼太郎」は、今の目から見るとすこし突飛なコマや台詞や展開は綺麗さっぱり削除(幽霊かあさんが生活に困って売血していた等のくだりもカット)して、ストレートな分かりやすさを残すという演出で成立させている。それはそれでいいけど、ぜひ原作漫画も読んで、この奇怪で奇妙で突飛な貸本怪奇漫画の世界を体験してみてほしい。






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