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2007.02.21 Wednesday

デスアイサツとゲーム脳、知らない人に挨拶したら死ぬ世界

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    オールFlashのWEB雑誌フイナム連載の「読書メロン」第11回「デスアイサツ、知らない人に挨拶したら死ぬ世界」を書いたよー。
    「2月21日号」をクリックして、目次で「読書メロン」をクリック!

    「大手小町」に“最近の小学校では「知らない人に挨拶するな」と指導してるの?”というトピックがある。
    小学生が、商店街のおじさんに「おはよう」と挨拶をした。おじさんが挨拶を返した。すると、それを見ていた先生が「知らない人に挨拶してはいけません」と指導した。そんな内容。
    ひええええーーーーと驚いて、さらにコメントに驚く。
    コメントのほとんどが、先生のほうが正しい、かわいそうだけど当然です、知らない人に声をかけられた時の悲鳴を上げる訓練も今の小学校では当り前、こんな世の中じゃ仕方ないといったもの。

    今回の読書メロンは、このトピックについて、イギリスの公園のリスクに対する考え方と関連させて書いた。
    字数制限があるので、書きたりないところもあったけど。で、ちょっと補足。

    「知らない人に挨拶しろと教育せよ」という主張ではなく、「知らない人に挨拶をするなという教育は、近視眼的すぎる」という主張である。
    リスク潰しにやっきになって全体像を見失うと、近視眼的なリスクがなくなっても、全体的なリスクが大きくなり、それはハザードとして襲いかかってくる。
    なんといっても、親の不安や萎縮した世界観を、子供に押し付けちゃかわいそー。

    「親の不安を子供に押し付けて子供の世界を萎縮させている」という危険性は、「ゲーム脳」を鵜呑みにする親も同じような構図になってると思う。
    「ゲーム脳」をいくら理屈で反論しても信奉している親が聞く耳持たないのは、そもそも理屈でゲーム脳を納得しているわけじゃないからだ。
    1・子供がゲームばかりする→2・気味悪い、子供に悪い影響があるかもしれないという不安→3・子供の悪いところは全部ゲームのせいじゃないのかしらん→4・「ゲーム脳」ってどこかの先生が言ってるらしい→5・わーい、えらい先生が私の不安を支持してくれた。
    という思考の流れなんだろうから、4の部分の正否を問うても、もともとそんなことには興味がないのだ。まず1と2の3の部分に対してコミットしなければ、そういった思考の人には届かない。

    おっと話がずれた。
    “最近の小学校では「知らない人に挨拶するな」と指導してるの?”のコメント、
    こんな世の中ですから、とか、子供を狙った凶悪な犯罪が増えてるんですよ知らないんですか意識が低すぎます、とか、悲しいけどこんな御時世ですからしょうがない、とか。
    それって、どういう根拠なんだろう?
    テレビがニュースで扇情的に報道するから?
    周囲でそういう不審者が歩いているという情報が流されるから?
    警察庁の資料凶悪犯罪の少年被害によると、凶悪犯、粗暴犯による少年の犯罪被害は、ここ数年減少している(というか、そんなに大きな増減はない)。

    そもそも、挨拶したり愛想よくしたせいでさらわれて殺された数より、親たちの虐待で殺される人数のほうが多い(昨年1年間で36人もの児童が、実の親たちの虐待によって殺されていた)。
    いや、教師による犯罪だって多い(平成17年度だけでも、わいせつ行為で懲戒処分124人、体罰で懲戒処分146人)。
    事件発生数からリスクを考えるなら、まず、親や教師に話しかけないよう子供に指導すべきだよ(もちろん、ぼくはそんな指導をすべきではないと考えている)。


    挨拶したり愛想よくしたせいで殺される世界であると思い込んでいる人のコメントは、何ら、その可能性の高さを立証したり、示したりしようとしない。(挨拶しないと教育したために増加する危険性に関しては目をつむって)いくら可能性が低くても、少しでも可能性があるんだからそうするんです!という主張すらある。
    実際の世界がどうであるかという全体の把握は関係ないようだ。
    こんな悲しい世界だから、というのは、世界の在り方ではなく、認識する人の世界の見方に「悲しい」フィルターやら「不安」フィルターが強烈に作用しているからなのだろう。
    こういった親の不安をダイレクトに子供に押し付けると、どうなるか?
    うちにも娘がいます。恐ろしい事件が多発し怖いですね。
    よく「変な人に声掛けられても返事しちゃダメよ!」と言いますが、いくらなんでも「見るからに変な人」には子供でも用心すると思うんですよね。
    はやり「どんなに優しそうな人でも、それはウソだから気を付けなさい」と最近では言っています。
    親切そうな人、愛想のいい人、男性だけじゃなく女性にも用心するように言い聞かせています。
    ニセ警官になって出没するかも?という想定もして「たとえお巡りさんでも、道で声をかけてくる人を信用しちゃいけない」と言っています。
    これでいいのか?と思ったりもしますが、何かあってからでは・・・・と思うと、そう言わざるを得ない気がして。
    対不審者の「叫び声」、どう指導していますか?のコメント)

    さぁ、危ないから子供は外へ一歩も出しちゃダメだって言う世界まで、あともう少しだ。

    フイナム「読書メロン」では、この問題に関連して、『遊び場の安全ハンドブック』『ホラーハウス社会』の2冊を紹介した。
    『ホラーハウス社会』は詳しく紹介できなかったけど必読。

    他にも、工藤和美『学校をつくろう!』佐藤幹夫『自閉症裁判』和田伸一郎『メディアと倫理』大村璋子『遊び場づくりハンドブック』も参考になる。
    コメント
    > 対不審者の「叫び声」、どう指導していますか?のコメント

    親の感情を子供にかぶせすぎることの『弊害』は、当の親は意識しようがないでしょうね、一生。そうやって親に感情を食いつぶされ、生きづらくなっている人がここにいますよ、と。

    児童虐待のニュースでも、被疑者のコメントが「子供が憎くて仕方ないからやった」なんてものは滅多になく、ごく普通のコメントだったりするものです。
    • NAK
    • 2007.02.22 Thursday 03:53
    挨拶を交わせる世の中が望ましいがそうもいかないので安全を優先している、挨拶をしないのがいいことだとするわけではない、というところまで子供に言って欲しいです。
    大人はリスクをはかりにかけて選択できるけど子供は基本的に周囲が基準だから。
    • 下駄郎
    • 2007.02.22 Thursday 11:58
    >それって、どういう根拠なんだろう?
    とりあえず、少し前に中年男性に挨拶した小学生が、「挨拶するんじゃねー!」と殴られたという事件がありました。もちろん、極稀な例です。
    しかし、不安・疑念というものは統計的に極稀な事例であるから、と割り切れるものではないですし、過保護になる親もある意味では仕方ないように思います。反面、交通事故など統計的に確率が高いものの方が「自分は大丈夫」と思ってしまう人間心理というのは、不謹慎ですがおもしろくもあります。
    また、「挨拶する→危険」という因果関係は明白に観測できますが、「挨拶しない→危険」となる因果関係ははっきり目に見えませんからね。「挨拶をすることで危険が減少する」ということを証明するのが難しい以上、論理的に「挨拶をしない方がするよりも危険である」と説くのも無理があります。
    何より、今の親世代は知らない人には「挨拶しない」、無関心・不干渉である方が心地良い、常識であるという環境に育ってきたからではないでしょうか?
    • RSR
    • 2007.02.22 Thursday 12:10
    「通り魔事件が多発しています。外に出ると襲われる可能性がありますので、家から出ないようにしてください。絶対にです!」
    と言われたら、「挨拶をするな」派の人は素直に従うんだろうか。
    あくまで「可能性に怯える」姿勢でいるのであればそうせざるを得ないと思うんだけど、それはずいぶんと気持ち悪い。
    • ミソラ
    • 2007.02.25 Sunday 11:15
    奈良では、知らない子供の挨拶に返事をすると、最悪拘留されます
    http://www.ceres.dti.ne.jp/~chu/law/hori_523.htm
    • ドクトル
    • 2007.03.08 Thursday 01:59
    「子供の挨拶=安全でない」うーん、わかりませんね。子供に挨拶されるって、すごく気分がいいですよ。この子たちを地域の大人たちで守っていきたいという意識が生まれますよ。子供の挨拶が悪いなんて言う人がいるから世の中がおかしくなっているような気がしますが・・・。
    その一方で、近所の防犯の為に「声掛けをしましょう」などという運動もあるようです。
    http://www.google.co.jp/search?hl=ja&safe=off&q=%E3%81%82%E3%81%84%E3%81%95%E3%81%A4+%E5%A3%B0%E3%81%8B%E3%81%91&lr=

    小コミュニティ内で完全監視体制を成立させるか、大コミュニティ内で他者(肉親でさえも!)を排除するか。どちらが望ましいんでしょう?
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