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2006.07.06 Thursday

『医療崩壊 「立ち去り型サボタージュ」とは何か』感想

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     呑み会とかで、最近おもしろい本はないですかーとか聞かれることがたまにあるのだが、ここ最近の本で大絶賛オススメ中なのは、小松秀樹『医療崩壊 「立ち去り型サボタージュ」とは何か』
    サイコドクターぶらり旅でも、“名著です。医療者も、医療を受ける立場の人も必ず読むべき一冊。”と絶賛。
     読むと、たいへんだよーたいへんだよーとカケスのサミーのごとく、この事実を知らせたい気持ちでいっぱいになって、こりゃぜひ大勢の人に読んでもらわなきゃならぬと使命感すら感じてしまう。
     8割が医療ミスに対して不安を感じる、SAFETY JAPAN調査なんて記事を読むと、うひゃー、そうかもしれないけど、まぁ、ちょっとこれ読んでみてよ、読んでから、話そうよ、って言わせていただきたい。
     著者は、虎の門病院泌尿器科部長の現役の医師で、きわめて深刻な事態に陥っている医療の現状を報告した本。
     “医療は検査にしろ、治療にしろ、体にとって基本的によろしくないことをする”という考えてみれば当たり前の事実。でも、自分や自分の家族の命に関わると冷静さを失う我々は、それを忘れてしまう。いや、それはしかたないとしても、今、多くの法律家やジャーナリストは、過度に、その冷静さを失ったサイドに感情移入しすぎて、適切な治療が行われれば、安心・安全であり、死んだりしないという妄想的な安全願望に支配されているのではないか。マスコミは、そういう方向に煽りすぎなんじゃないの。
     患者側の情緒を強調した報道が、いびつで過度な安心願望を生んで、医師を攻撃する。そうなると、訴訟リスクの高い科には若い医師がいなくなり、中堅医師は、安全で収入も高い開業医にシフトしていっちゃうよ、というか、もうすでにそうなっているんですよ。医療が崩壊していってますよ。
     といったようなことを、具体例をあげて記している本なのです。
     つまり、考えようによっては、医師サイドからの患者批判・マスコミ批判でもあるわけで、ちょっと考えてもリスキーな行為だと思うんだけど、著者は、そのリスキーさをきちんと認識し、そのうえで丁寧に冷静に記している。対策も提案されている。
     さまざまな読み方ができる。
     もちろん、今の医療現場の状態を知るための重要な一冊として読める。
     医療現場だけじゃなくて、これと同じ構造が現代社会の歪みになっているという視点も与えてくれる。
     あと、自分サイドから説明することが困難なさまざまな事情(それが読み手を批判することになって、なかなか冷静に聞いてもらえそうにないことを含む事情)をどうやって説明するか、という文章の書き方の見本にもなっている。
     とにかく、どんな人が読んでも、衝撃を受け、考え方が変わる一冊だと思う。
    (って、思い出して書いてたら興奮してきて、「現代社会」「重要な一冊」とかふだん使わない気張った言葉を使っていますが、まぁまぁ、まぁ、それだけ、ちょっとまぁ、読んで欲しいと思っちゃったりした本です、ってことで)
    コメント
    雪印食中毒事件あたりからか、加工食品に対するマスコミの報道とそれから引き起こされる消費者の態度も強迫的だと感じています。

    洗浄用のブラシが破損して、その破片が混入したくらいで、全品破棄。出荷後に発見されれば全品回収&破棄。もったいない事この上ないと思うのですが。

    ただそれをしないと、マスコミからはものすごい勢いで叩かれ、消費者からは「消費者の食の安全をどう思っている?殺す気か!?」的に苦情を言われます。

    都会で文化的な生活を送っている我々は大人しく工場で作られた加工食品を食べるしかなく、環境負荷という面からもそんなもったいない事を出来た立場では無いと思うのですが。破片なんぞ、入ってたら「ペッ」と吐き出しておけばいいだけなのに…
    • 家事手伝い
    • 2006.07.09 Sunday 09:33
    医療も食品も、在って当たり前でちょっとでも不都合があると即叩きモード
    医学生レベルだと現場にいないことと学業として頑張ってる部分から、小児科や産科にも希望を持っている(世間知らずってやつですね)が、2年の臨床研修の間に大変さが分かり楽な科へと転向wします、それが現実
    そしていまの小児科や産科は入ってくる後期研修医がおらず、余計に現場が負担増という悪循環に
    5年10年後にもあればいいねw

    ちょっと視点が違うけれど、別冊宝島1316 食品のカラクリ(宝島社)を少し推薦します
    • じおんぐ
    • 2006.07.09 Sunday 13:31
    『医療崩壊 「立ち去り型サボタージュ」とは何か』に、小児科や産科の崩壊の話もでてきていて、本当に、そうとうしんどい状態のようですねー。うーむ。
    「食品のカラクリ」、読んでみたい。

    以前話題にした「主語は誰なのか」ということに通じる問題だとも思うので、もっと考えてみたいと思います。
    • 米光
    • 2006.07.10 Monday 13:55
    食の安全では一番卑近な食中り、食中毒の問題があります。7月に「食中毒を防ぐ!家庭の調理・新常識110」(現代書林)が出版されました。モヤシがウンチほど汚く、シンクで洗うと菌で汚染されてしまう話や、カイワレ大根が菌の揺りかごで育っている秘密、キュウリが食中りの真犯人である話など、目から鱗の話が満載です。小さな子供や老人がいる家の主婦は必読と思いました。またこれから結婚する人も読むべきと思います。安全な食卓なくして食育なし。
    • トビー
    • 2006.07.24 Monday 13:23
    >トビーさん
    「食中毒」で検索して、手当たり次第、宣伝コメントですか?(笑)
    • 家事手伝い
    • 2006.07.27 Thursday 19:53
    医療現場にいるものです。
    立ち去り型サボタージュは現実におこっています。
    燃え尽き型ともいえるかもしれません。
    医療崩壊は秒読みともいえるでしょう。

    課題は一度崩壊した後にどう再建するかに移っています。
    「新小児科医のつぶやき」「ある産婦人科医のひとりごと」「伊関友伸のブログ」「産科医療のこれからhttp://obgy.typepad.jp/blog/
    などもときどき巡回して読んでみてください
    • Nnanashi
    • 2007.09.16 Sunday 03:10
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    医療現場を叩くだけでは好転しない「医療崩壊」
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