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2005.02.26 Saturday

『撲殺天使ドクロちゃん』を20数名の女性に読んでもらうという実験

0
    現代作家ガイド」のおかゆまさきの項で、

    撲殺天使ドクロちゃんを、
    “女性が、楽しめるかどうかは、今、20数名の女性にお願いして読んでもらっています(マジで)。実験結果は、三月中には出ますので、その時には、特例で、このページを更新して、報告します。なので、また見てね。”
    って書いたのだが、
    それってどういうこと!?
    という質問をいただいたので、解答!
    20数名の女性が、撲殺天使ドクロちゃんを読むことになった経緯ですが――。発想力トレーニング
    2月12日、池袋コミュニティカレッジで行われている豊由美の書評の愉悦のゲストとして参加したのである(米光の「デジタルコンテンツ仕事術」「発想力トレーニング講座」→案内サイトもよろしく。4月からスタートです。おもしろいですぜ。)。
    豊由美+受講生の中にまじって無記名で書評を提出。全員が採点して、書評王と決めるという厳しいシステムの講座なんである。

    課題本は、三崎亜記『となり町戦争

    いちおー(←気弱)プロなんで、つまんない書評を提出して、16位でした、なんてことは避けたい。できれば、あるひとつの野望をかなえるために1位を狙いたい。

    で、がんばって書きました。
    3バージョンぐらい書きました。

    以下、書評講座に提出しなかった「没バージョン」。

    “となり町との戦争がはじまる。”
    なんて強烈なはじまりの一行。だが、この作品の中では、戦争の悲惨さが直接描写されることはない。
    主人公である僕は、町の広報誌で、戦争がはじまったことを知る。公共事業として行われる戦争は、日常に埋没していて、戦時下の実感が持てないまま、見えない戦争に巻き込まれてしまう。
    この不条理な状況で、僕はどう足掻くのだろうか。それは、今、ぼくが「戦争のニュース」をテレビで見ながら、何もできないという無力感とシンクロしていくのだろうか。イラク戦争では、本来ならば軍隊がやるべき業務を民間の建設業者に任せてしまった。戦争が事業として行われているのは現実なのだ。だけど、コントロールされた情報しか入手できないぼくたちはどこにも実感をもてず茫洋とした不安の中で苛立ち、足掻いている。
    だが、僕は、足掻かない。
    ここまで主体性のない主人公も珍しい。
    戦争について知ろうともしない。テレビをまったく見ない人という珍奇な人物設定で、ニュースを見ようともしない。新聞も読まない、ネットも見ない、会社へ行っても開戦の話をすることもない。えーと、見えない戦争を描いたというより、主人公が、見てないだけ。見てない戦争だ。広報誌1枚で開戦を信じちゃうメディアリテラシー欠如な男が主人公なのだ。知ろうとする意欲だけはうっすらとあるのだけど、そのために行うのは戦争に参加することだけ。状況が不条理なうえに、主人公も不条理な性格で、不条理の2倍不条理。ただただ、状況に流されている。流れ作業として盲目的に勤務する公務員どころではない。ひょろひょろ流されている。
    香西さんが失う弟、主人公が失う恋、主任が失う日常の喜び、三重に描かれる喪失感が、それぞれの戦争のリアルに結びつくという構成も、まぁ、「そりゃ失うだろ。あんたらが、失われていくものを自ら繋ぎとめようとしなかったのだから」としか思えない。主人公だけじゃなく、登場人物すべてが、メディアリテラシーも主体性も欠如しまくりなのだ。だから「喪失の痛み」なイメージで描かれる後半も、痛くない。痛いわけがない。何もしてこなかったのだから。見殺しにしちゃってセンチな気分になってるだけだ。
    と思っていたら、若い知人が、本書を読んで感動してた。「軟弱なカフカみたいじゃない?」とカフカには失礼だと思いながら言ったのだけど、「そうですよね!」と何故か喜び、「見えない戦争をリアルに描いていて凄くて、今は軟弱なカフカな時代なんですよね」などと興奮気味に話しかけられてしまった。返事ができなかった。
    ぼくは、凄い本を読んだという実感が持てないまま、彼の見えない情熱に巻き込まれて、ニヤニヤと笑い、本書に対する賛辞を聞きながら、ひょろひょろ流されている。


    で、以下が、書評講座に提出したもの(内容について触れているので、白紙の状態で三崎亜記『となり町戦争を読みたい人は、読まないほうがいいかも)。

    「ウチ、ダーリンのこと好きだっちゃ!!」
    って『うる星やつら』の例を出すまでもなく、同居型ラブコメは、もはやマンガ界では古典的なパターン。ひょんなことから思春期の男子が、女子もしくは女子姿の異星人と突然同居するハメになってしまうという願望充足まんまんの設定だ。
    そんな使い古された同居型ラブコメの最先端小説が「となり町戦争」! 小説すばる新人賞受賞!! 井上ひさし先生絶賛!
    “となり町との戦争がはじまる。”
    を引用するところから、ほとんどの書評がはじまるぐらいに、キャッチーな書き出し。
    主人公である僕は、町の広報誌で、戦争がはじまったことを知る。公共事業として行われる戦争は日常に埋没していて、僕は戦時下の実感が持てないまま、見えない戦争に巻き込まれてしまうのだ。
    と、テーマもキャッチー。でも、戦争のことなんか、なーーんにも考えてません。主人公は、戦争について知ろうともしない。テレビをまったく見ないという珍奇な人物設定でニュースを見ようともしない。新聞も読まない、ネットも閲覧しない、会社へ行っても開戦の話をすることもない。見えない戦争を描いたというより、主人公が、見てないだけ、見てない戦争だ。広報誌のみで開戦を信じちゃうメディアリテラシーの欠如。知ろうとする意欲はうっすらとあるけど、そのために行うのは流されて戦争に加担することだけ。
    でも、でも、でも、正しい、正統派だ! 同居型ラブコメの主人公は、思春期少年に感情移入してもらうために、優柔不断で、主体性がなくて、自分の周囲3メートルのことしか考えない男子が基本。本書の主人公も、まさにそんなヤツ、これでいいのだ!
    で、スパイ活動ってことで、役場の戦争係の香西さん(美人)と同居することに。でも最新鋭の同居型ラブコメは、クールだから、このあたりでドタバタせずに、すぐセックス。しかも、それは公務員としての任務だったというお約束なオチ。松本零士先生のマンガであったよね、こういうの!
    香西さんが失う弟、主人公が失う恋、主任が失う日常の喜び、三重に描かれる喪失感が、戦争のリアルに結びつくというラストも、さすが! 主人公だけじゃなく、登場人物すべてが、メディアリテラシーも主体性も欠如しまくりだから、本当は、ただ単に見殺しにしちゃってセンチな気分になってるだけなんだけど、素直な文章で、こっちもセンチな気持ちにさせてくれる。「女子が遠いところに去っていった喪失感が、青春の卒業に結びつく」という同居型ラブコメの基本エンディングのアレンジとしては最高に上手い。
    戦争のニュースが続く不安な時代だから、こういう小説を読んで、戦争から目をそらして安心するひとときも、いいかもしれませんね! ぼくのところにも、かわいい女の子、ふってこないかなー。

    で、書評王になりました!
    やほーーーい。

    書評王になると、次回の課題本を決めることができるというルールなのです。
    そう。
    そこで、20数名の女性+ちょびっとの男性の受講生の前で、ぼくが、課題本に設定した本は、撲殺天使ドクロちゃん

    いや、はっきり申しまして、わたくし、「わはは〜 米光さん、なんて本を課題にするんですか」ぐらいのリアクションだと思っていたんですが、講座の後の呑み会で、非難ごうごうでした。
    「なんちゅー表紙の本を買わせるんですか、乙女に!」「ライトノベルって、何ですか!? どうやって読めというのですか!?」「あぁ、こんな人に点を入れるんじゃなかった」といった勢いで、もうM男なら昇天してしまうほど、にぎやかに、いじめられました。
    やっぱり、一般的には、ライトノベルって、まだまだ、こう、なんつーもんですかッ、な、もののようです。

    で、3月の次回の書評講座では、20数名の女性+ちょびっとの男性が、撲殺天使ドクロちゃんを読んで、書評を書いて、集合するのですよ。
    わははーい。
    楽しみであります。
    コメント
    もともとライトノベルはすき間産業だと思ってるので、この反応はすごく納得、なんですが……果たしてドクロちゃんを読んだ普通の女性はどういう感想が飛び出すのかと思うとわくわくします。結果を知るのが今から楽しみです。
    • tonbo
    • 2005.02.27 Sunday 01:35
    どういう感想が出るのか、ぼくも、楽しみです。結果が出たら、また報告しますなー。
    すき間産業というか、ある特定のターゲットを狙ったものである、という認識はあるので、もちろん歓迎されるとは思ってなくて「うひゃー、いじわるー」ってぐらいの反応だと思ったのですが、それどころではなかった、感じです。わははー。
    始めまして。

    そろそろ『撲殺天使ドクロちゃん』を20数名の女性に読んでもらうという実験の結果は出てる頃でしょうか?
    楽しみにしておりますよ(笑)。
    • 一円切手
    • 2005.03.30 Wednesday 00:15
    『撲殺天使ドクロちゃん』の回の書評講座、行ってきたのですが、リポートがまだ書けておりません。ちょい忙な状況から抜け出せたら、報告いたしますので。よろー。
    電撃hpではたまにチェックしていたのですが、
    単行本でのまとめ読みはしていませんでした。
    これから一気読みしてみます。
    • ごーや
    • 2005.05.20 Friday 00:51
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