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2012.08.27 Monday

ゲーム実況で実感する堀井雄二の凄さ

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    8月11日深夜、ニコ生公式ゲーム実況に出演したよー(SIRENシリーズ+人気ホラーゲーム81時間ぶっ通し!実況これを見ないと夏休みは終わらない生放送:ニコニコ「制作者もみんな実況するといいよね」――「ぷよぷよ」「ドシン」「かまいたち」の3人が「ゆめにっき」を実況して感じたこと:ねとらぼ)。
    の記念に、むかしアライユキコが書いたゲーム実況原稿をアップしよう(besidegamesってサイトにアップしてたんだけどサイトがなくなっちゃったので復活)。
    2008年8月に書かれたテキストです。


    ゲーム実況で実感する堀井雄二の凄さ

    「ゲーム実況プレイ動画」にハマっているアライユキコが書かせろーというので、今回は、ジャックされた。

    この夏、ニコニコ動画で盛り上がってるのが「ゲーム実況動画」である。
    その名のとおり、任意のテレビゲームを、語りを交えてプレイした動画だ。簡単にいうと、有野課長が「ゲームセンターCX」で「魔界村」や「プリンス・オブ・ペルシャ」に挑戦していたようなノリである。
    去年の暮くらいは十数人だった実況者がいまは1000人を超える勢い(参照/ゲーム実況プレイ動画シリーズ@wiki)。
    趣向を凝らした動画も多い。昔「RPGツクール3」でつくったゲームを大人になった視点で実況(「中二の頃作った黒歴史RPGを実況プレイするぜ」完結/ルーツ)、酔っぱらってクダを巻きながら「ひぐらしのなく頃に」の体験版に初挑戦(「その日暮らしの僕がひぐらしのなく頃にをやる系でいく系」更新中/たろちん)、イケメンと女性キャラを使用禁止、ノーリセットで挑むSFC版の「ファイアーエムブレム 紋章の謎」(「ファイアーカトブレム・ガチムチ老兵一揆〜マルスはつらいよ〜」更新中/加藤)など、タイトルだけで思わず笑ってしまった。仕事のあいまにちらっとのつもりで見始めたら、あっというまに1時間! ということもたびたび発生。危険かつ魅力的なジャンルとなりつつある。

    そのなかでも、とくにおすすめしたいのが、「小悪党がPSドラクエ4を真面目に実況」。実況者はしんすけ。去年の10月から今年の2月にかけて「ゆとりの友人に無理やりFF4実況させてみた」というシリーズで大人気を博した4人組実況グループのリーダーである。わたしもこれをきっかけに実況動画にハマった。「ゆとりFF4」の影響で実況をはじめたひとも多いようで、いわばブームの立役者である。ゲームというメディアの最大の特徴とは、インタラクティブであること。だから「どうプレイするか」はプレイヤーのオリジナルである。しんすけ動画を観ていると、同じゲームでも、優秀なプレイヤーの手にかかれば、ボンクラプレイヤーであるわたしなどとは全然違う物語が立上がってくるということを思い知らされる。また、ゲーム内のできごとを的確に現実にたとえる機転と話術、一本道のRPGをまず思いつかないような方法で攻略する発想力など、エンターテイナーとしての資質にも恵まれており、まさに、ゲーム実況をするために生まれて来たような男である。

    そして、もうひとつ。しんすけの実況には、対象ゲームへの深いリスペクトがある。「小悪党がPSドラクエ4を真面目に実況」を笑ってみながらも、強く印象に刻まれていくのは、堀井雄二テキストの凄さだ。

    たとえば「第1章 王宮の戦士たち」。王様から、村の子どもたちの失踪事件の解決をまかされた戦士ライアンは、冒険の途中、ホイミスライムのホイミンを仲間にする。ホイミンは人間になるのが夢で、話しかけると、「ライアンさん ライアンさん! えへへ 呼んでみただけ」など、かわいらしいセリフを連発。ホイミスライムは、敵としてふつうに登場するモンスターだが、それ以後、しんすけは、いかなる戦闘でもホイミスライムを倒さない選択をする。どんなに辛い戦闘になっても「ここで倒してしまうと、ホイミスライム界でのホイミンの評判がさがる」と、絶対に闘わず「にげる」コマンドを選択し続ける(わたしはそんなことまで考えず、ばんばん倒した)。しかし、1章のラスボスのいる塔でホイミンは言うのだ。
    「ライアンさん ぼくと同じホイミスライムが出てきても なさけをかけちゃダメだよ」

    これぞ堀井シナリオ! ホイミスライムを倒すのをためらうプレイヤーがいることを予測し、このセリフを用意しているのだ。あなただったらこのセリフを用意できましたか? と、このページの本来の持ち主でもあるゲームクリエイター米光一成に聞いてみた。すると。
    「ホイミスライムを倒さないまま塔にいった場合に発生するイベントにしちゃうかもしれないなー。ご褒美のある隠しイベントみたいな感じで。ここまでフラットにやるのはすごいよね」
    という答えが返ってきた。そう、このセリフがすごいのは、ホイミンに感情移入したプレイヤーだけに、「ただの物語」を手渡すところなのだ。攻略でもご褒美でもない物語そのものを。ホイミスライムをばんばん倒してるようなボンクラプレイヤーでは気づかずにスルーしてしまうようなさりげない台詞で。
    「ホイミンは、真の戦士だったんだな」としんすけは言い、このあとにホイミスライムが出て来ると「ホイミン、お前が望むなら」と容赦なく倒していく。

    このあたりで、「小悪党がPSドラクエ4を真面目に実況」が、優秀なプレイヤーであるしんすけと、堀井雄二との一騎打ち的な動画となることを予感した。それは回を追うごとに確信に変わっていく。
    「第3章 武器屋トルネコ」の自由度の高いシナリオを逆手にとった巧みなプレイ構成などは、プレイヤーと作者のコラボレーションを見るようであった。

    そして、ついに5章に突入。このオープニングは、ドラクエシリーズ屈指の鬱展開である。ついに悪の枢軸デスピサロが、勇者しんすけの居場所を突き止め、その命をとろうと村に攻め入ってくる。村人によって地下室に匿われるしんすけ。そこに幼なじみの少女シンシアがやってきて「モシャス」をとなえる。勇者そっくりの姿になって「さようなら」と地下室を出て行き、身代わりになって死んでしまうのだ。

    しんすけがこの5章の幕開けをどう料理するか。ワクワクテカテカで待っていた。実際、4章の最後から、更新までにかなり時間がかかった。悩んだんじゃないだろうか。

    ファンの多くは、悲しい展開にストレートに感情移入し、シンシアの献身に泣くしんすけを予想、あるいは期待していたと思う。しかし、それでは芸がない。すでに「ゆとりFF4」で、モンク僧ヤンの自己犠牲に泣き、それを名シーンと語られているしんすけである、きっと同じ手は使うまい。さてどうでる?

    見事だった。高いハードルをどう飛ぶかと見守っていたら、少し離れた競技場で走り幅跳びに出場、記録更新してましたーみたいなサプライズがあった。
    勇者しんすけは、シンシアの犠牲を無情に乗り越え、修羅の物語を選んだのだ。
    具体的に言うと、その物語は「はねぼうし」を中心につくられた。
    地下室を出た勇者しんすけは、デスピサロによって焼き払われた村を目にする。そして、いつもシンシアが寝っころがっていた花畑に行き「はねぼうし」を拾う。「形見か?」としんすけは言う。

    こんなところに落ちていること自体、ボンクラプレイヤーのわたしは知らなかったが、「はねぼうし」であることがすごい、と戦慄した。「シンシアのぼうし」じゃない、ただの「はねぼうし」。ふつうに店で売っている、女性キャラの平凡な初期装備である。

    この「はねぼうし」をしんすけは、つぎの町で売っぱらってしまう。そうして得た金で「クロスボウ」を手に入れ、「オレ、ゲームうまいだろ?」と非情に言い放ってみせた。

    ここでまた、ゲームクリエイター米光一成に聞いてみた、もしあなただったら、シンシアの形見を「はねぼうし」にしましたか?
    「どうだろうなー。もっとシンシアを連想させるものにしたがるかも。魔法をつかうキャラだから、『まどうしのつえ』とか」

    だけど堀井雄二は「はねぼうし」にした。だから、そこからいくつもの物語が発生する装置になり得た。拾ったアイテムをどう扱うかによって、冷徹でたくましい勇者にも、 情緒的で健気な勇者にもなれる。あるいは「はねぼうし」の意味に気づかない幼いプレイヤーもいるかもしれない(しかし勇者の年齢設定も17歳かそこらなのだ)。どういう選択をしても、プレイヤー固有の物語が生まれる。まさにインタラクティブ。 この物語のありようこそが、ゲームの凄さなのだと思う。 しんすけの実況によって、それがよくわかった。

    と、現在、この5章の続きを待っているのだが、ちょっと残念な状況になっている。「DQ4はしんすけ、初プレイじゃないのでは?」という疑惑を呈する視聴者が表れ、その〈証拠〉をもちだし、「嘘をついていたのか?」と釈明を求める声が高まったのである。たしかに「DQ4」に未知の感覚で入っていく趣向にはなっているが、ゲーム世界への深い理解にもとづいたこの動画が初プレイであるほうが奇跡。わたしはそう思っていたので、その疑惑が真剣に取りざたされていくこと自体に戸惑った。

    先日、しんすけは、突発的にラジオを企画し、視聴者の疑問に答えた。「DQ4」が既プレイであることを認め、出世作の「ゆとりFF4」の裏事情まで暴露した。番組自体は他実況者といっしょにわいわい本音を語る楽しいものだったが、その結果、現在「小悪党がPSドラクエ4を真面目に実況」の更新は中断している。完結すれば、しんすけの代表作となるに違いないと楽しみに見守っていたシリーズだけに、とても心配だ。
    だが、しんすけのことだ。そのうちしれっと再開してくれる違いない。走り幅跳びと見せかけて、じつは砲丸投げだった、というような意表のつきかたで。わたしは待っている。そして、天才堀井雄二のテキストと、もっと激しい火花を散らしてほしい、「ゲーム実況動画」の可能性をもっともっとひろげてほしい。
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