<< 津原泰水『バレエ・メカニック』とジョルジュ・サドゥール『世界映画全史2』 | main | 夜のゲーム大学4「ゲーム製作のキモ。作れ壊せまた作れ」 >>
2010.03.24 Wednesday

『ゲームデザイン脳』のショック

0
    『ゲームデザイン脳 ―桝田省治の発想とワザ―』は、徹底して具体的だ。
    たとえば「僕は、こうしてゲームデザイナーになった」の節。
    “別のことをやっているうちに、ゲームデザイナーに必要なスキルを知らず知らずのうちに僕が偶然身につけていた可能性が大きい。(あくまで可能性だ。本当かどうか自信はない)/というわけで、本節では僕の略歴に独善的な解説をつけてお茶を濁す。”という前置きのもと、著者の略歴が展開する。
    “何も得るところがないかもしれない”という断りのとおり「ゲームデザイナーになるには、どんな勉強をすればいいのですか?」という質問の直接的なハウツーはまったく語られない。
    でも、それが真実なのだからしょうがない。「ゲームデザイナーになるには、どんな勉強をすればいいのですか?」という設問の立て方が間違っている。
    それは「大人になるには、どんな勉強をすればいいのですか?」という質問と似ている。
    答えられるわけがないのだ。誰に聞いても答えは違う。ソープへ行け。社会に出ろ。仕事しろ。勉強しろ。どれも正解だし、どれも役に立たない。
    それどころか、その解答を妄信し猛進すれば、もっとも間違った方向に歩んでいくことになる。
    「あなたになるには、どんな勉強をすればいいのですか?」という質問にも似ている。
    答えられるわけがないのだ。
    もっとも誠実な答えは、答えられない、もしくは、自分の経験を具体的に述べる、つまり独善的な略歴を語るしかない。
    ハウツーめいたものは、そこから自分が読み取るしかない。だが、本来、そうなのだ。こうやってこうやってこうやりなさい、発想するにはこのフレームワークが、ゲームデザインのコツはこうしてあーして、なんて「一般的に役に立つ」なんてのは、ウソだ。ウソは言い過ぎた。それは、その人のゲームデザインでしかない。あなたのゲームデザインは、あなたが見つけるしかない。一般的に役立つ方法などを学ぼうとしている瞬間に負けている。
    もっと言えば、新しいゲームを作るときには、その度ごとに新しい作り方を発見することが必要なのだ。
    そこを、ひとから教わろうとするひとは、もともとゲームなんて作る意欲も術も持ってないのだから、そんな大変なことはしないほうがいい。そもそも、そこがゲーム作りの自分で発見すべきこところであり、ゲーム作りの面白いところなんだから、そこを人のマネしちゃ、ダメだろ。

    作詞家の松本隆が言ってた。「ハウツーで出来ることはものすごく浅いことだ ハウツーは忘れるべきだ ぼくはスキルもある 語彙も豊富だ だけど創るときは真っ白だ」って。真っ白なんだ。

    『ゲームデザイン脳』は、直接的なハウツーを回避して、徹頭徹尾、誠実に、『俺の屍を越えてゆけ』『リンダキューブ』などの作品だけではなく、サーカスや日常の話を通して、具体的な例を次々とあげながら展開していく。
    美人編集者が出てきて「ゲームデザイナーになるには、どんな勉強をすればいいのですか?」的な身も蓋もない質問と要望を担当する。桝田省治は、そのストレートな要望にちょっとだけ応じてみたり、でも、はぐらかしたりかわしたりしながら、経験やエピソードを具体的に語る。失敗談も、発想したきっかけも、がんがん具体的に語られる。「我が竜を見よ」の失敗談で、プロデューサーにそれでは「売れない」と断言され、メインの面白さを担う竜の種類を半分にし他の部分を増やす要求を飲んだ、というエピソードは、読んで、うるうるした。泣きそうになった。そっけなく書いてるけど、ああああと何か自分の中の過去の記憶がのし上がってきた。
    中ボスが強すぎるとテストプレイヤーから不満があがったときどう調整するか。一番やってはいけないことは、中ボスを弱くすることだ、と語る。そう、多いんだよ、そういう調整する人! 違う、調整っていうのはそういうことじゃないんだ。どういうふうにやるといいかは本書に具体的に書かれているので読むといい。
    できるのは、他人の経験やエピソードや背中を見て、そこにショックを受けたり、影響されたり、共感したり、反発したり、ピカッとしたりすることだ。ショックを受けたら、立ち直って、そこから自分のハウツーを作り上げればいい。
    『ゲームデザイン脳』には、そのためのショックがたくさん詰まっている。


    余談。
    「ウルティマ」シリーズ開発者によるゲームプログラミング解説書『ゲームコーディング・コンプリート 一流になるためのゲームプログラミング』ってのが出るらしい。864ページ!
    コメント
    失敗も書かれている、ところに引かれます。「リンダ」も「オレ屍」も「暴プリ」もやりましたけど「竜」は体験版でノレなかった……。コレ読んで、俺屍2に備えたいと思います。
    • ルー
    • 2010.03.24 Wednesday 15:49
    答えがあるとすれば、「試行錯誤しなちゃい☆」 ってこと
    • マナエクスレギオン
    • 2010.03.24 Wednesday 23:44
    関係ある話かはわからないけど
    「つめのアカを煎じて飲め」ということわざ、きっとこういう話だと思う

    昔、ハナたれ小僧が 村の賢者様に「どしたら賢くなれるんですかぁ〜☆」という質問をして。賢者様から返ってきた答えが「私の爪の垢を飲みなさい」という内容だった。こうして彼は爪のばい菌や鼻クソをいっぱい食わされました。

    これは人の話を鵜呑みにする前に自分で考え、試行錯誤しろという違う意味での教訓がこめられているのかも、と今ふと思った。それと似てるかも


    • マナエクスレギオン
    • 2010.03.26 Friday 00:04
    コメントする








     
    この記事のトラックバックURL
    トラックバック
    Calendar
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031   
    << January 2018 >>
    Selected Entries
    Categories
    Archives
    Recent Comment
    • 文章を書いたらチェックしたい17の項目改2
      米光 (06/13)
    • 「キングオブワンズ」またも復活
      頼鳥 翠 (02/20)
    • 『魔導物語』20周年記念メモ
      /Tachesci (11/23)
    • 「アンチオレンジレンジ」サイトが「オレンジレンジファン」サイトになってる理由
      x hot アイアン (08/13)
    • 発想力トレーニング講座「想像と言葉」
      おやつ (06/22)
    • 宣伝会議編集ライター講座上級コース第7回目
      米光 (04/28)
    • 宣伝会議編集ライター講座上級コース第7回目
      通りすがりA (04/27)
    • 偶然を味方につける
      う。m (03/17)
    • 「人生は神ゲー」と考えてみるゲーム(ゲーミフィケーションについて3)
      もやし (01/22)
    • 日本公式萌えキャラ「ひのまるこちゃん」とか作ればいいんじゃないか。
      笹 (06/17)
    Recent Trackback
    Recommend
    自分だけにしか思いつかないアイデアを見つける方法―“企画の魔眼”を手に入れよう
    自分だけにしか思いつかないアイデアを見つける方法―“企画の魔眼”を手に入れよう (JUGEMレビュー »)
    米光 一成
    “「ぷよぷよ」を作った人気ゲームクリエイターが、若手育成カリキュラムの中から生み出したトレーニング法を公開!”
    Recommend
    仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本
    仕事を100倍楽しくするプロジェクト攻略本 (JUGEMレビュー »)
    米光 一成
    「楽しいプロジェクト型」で仕事を楽しくデザインするための攻略本。
    Links
    Profile
    Search this site.
    Others
    Mobile
    qrcode
    Powered by
    30days Album
    無料ブログ作成サービス JUGEM