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2010.01.14 Thursday

第142回芥川賞候補作、藤代泉『ボーダー&レス』感想

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    藤代泉『ボーダー&レス』
    第142回芥川賞候補作。
    候補作を全部読んだのだけど、一番好き。良かった。芥川賞、とってほしい。
    在日コリアンのソンウと、新入社員のりーりん二人の友情物語。エスニシティ(共通の出自・慣習などを持つメンバーの帰属意識)の問題だけじゃなくて、向き合うことの難しさや、先に行けそうにない不安など、いま若い人が抱えている問題(←って紋切り型のフレーズを安易に使っちゃうけど)がひしひしと伝わってくる。それを、突破しようとする気持ちも伝わってくる。

    「恋愛小説ふいんき語り男性作家編」の8回目で、金城一紀『GO!』について
    米光 だけど、やっぱりそこはひとまとめにしちゃいけないんだよ。最初に言ったように、オレは、この小説は絶対恋愛小説だって思いたい。だって恋愛ってすごく個々じゃない、韓国人だから嫌い、日本人だから好きってことはありえないはずで、一対一の問題なんだよね。桜井の父は、団塊の世代の代表として出て来るけど、オレらより上の世代の言説として、ひとまとめにしてダメって言ってしまう感覚をもっているひとは多いのかもしれない。それに桜井が、無意識に影響を受けてしまっている。
    飯田 いや、今の若い世代も先祖帰りしてるよ。2ちゃんで書いてるやつらとか、すごい若いのに差別意識持ってるんだし。
    米光 でも、彼らが現実に、かわいい異性として在日の女の子に出会ったらどうなのかと。彼らと桜井はいっしょだよ。
    飯田 ああ、個として出会ってしまえば、ただのボーイミーツガールになる、そこから変わっていく可能性がある。
    米光 じゃないかなあ。

    なんて話をしたんだけど、『ボーダー&レス』は、まさに『GO!』の先の、今の物語。

    デビュー作なので「破綻していてもいいから破天荒なものを!」って期待には応えてくれない。
    でも、これはこれでデビュー作らしい。すごく真摯。内容が、自分の手元から出発して、遠くへ進もうとしている。
    くすくす笑えるシーンもあるし、二人のやりとりも楽しい。
    いくつかジーンとくるところもある。
    携帯電話の使い方、差別的な問題や、合コンのシーンも、今でしか表現できないことをしっかりと描いている(長嶋有『パラレル』『ジャージの二人』を思い出した)。

    目をそらさず、ひとつひとつ丁寧に、でも肩の力を入れすぎずに、真剣に書いている。
    自分が小説を書くということの決意表明にも受け取れる内容。
    “まったくの白紙から出発するこの明るさは、他に変えがたいものがある”と選評で斉藤美奈子が書いているように、この小説は明るいところが、すごくいい。
    次にどんな作品を書いてくれるのか、すごく楽しみです。
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