2010.09.09 Thursday

松永肇一「ホメオパシーと知恵の輪」を読んで考えた

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    松永肇一「ホメオパシーと知恵の輪」について疑問をtwitterでつぶやいたら、いろいろ議論が起こった。
    有益な情報交換もできたので議論はよかったんだけど、その後も見知らぬ人から勘違いされていろいろ言われちゃうで(そのうえ言ってないことを言ったとか言われて困るので)、ここにまとめておく。

    松永肇一テキストは、こう述べる。
    “実は通常医療や代替医療なんてものは医学の世界には存在しない。効くか効かないか、それだけだ。”
    で、“サイモン・シン(面白科学本界の最強挑戦者)の『代替医療のトリック』に書いてある”として、こう続く。
    “ホメオパシーが有効かどうかのテストは過去に何度も行われているし、結論も出ている。「治療効果はない」のだ”
    そして、他の代替医療についても。
    “「効果なし」と判定された代替医療はホメオパシーだけではない。カイロプラクティックも鍼灸もリフレクソロジーもそうだ。”

    で、“そのテスト方法はとても公平だ。”って言うんだけど、「そうかなー公平かなー?」というのがぼくの疑問だ。

    テスト方法のキモは、2つある。
    “治療を受けている人たちは「治療を受けている」事実が症状を改善させる。お医者さんに薬をもらうと効いた気になっちゃう。これを偽薬効果という。偽薬効果を避けるためには、治療を受けないグループにも効き目のない薬を与え、自分がどちらのグループにいるのか分からないようにする必要がある。”
    “これで完璧と思ったら、もうひとつ不確定要素がある。それは医者だ。医者も人間なので、どうしても予断が入る。自分の信じた治療法なら甘く判断するかもしれない。自分の患者にどちらのグループなのか教えてしまうかもしれない。だから医者が受け持っている患者がどちらのグループなのかは、医者本人にも教えない。”

    で、ぼくは、ホメオパシーや鍼灸などの民間療法のキモは「長年かけて築いてきた虚構体系が効く」という点だと思う。
    単純に言っちゃえば「おまじない」だ。でも、それが効くためには、おまじないを信じている必要がある。信じていない人には効かない。
    おまじないの虚構体系を説明して「ほほー」と納得する必要がある。
    たとえば、お年寄りがいる。腰が曲がって動くのがしんどい。でも、じっとしてると体に悪い。週に2回ぐらいは出歩いたほうがいい。
    っていう状況で、週に2回、街にいる針灸の人のところに歩いていって、話して、笑って、健康の話を聞いて、ふむふむって帰る。
    そのことが効く。
    いや、じゃあ、「散歩が効くだけだから、散歩すればいいのだ」というのは理屈だ。散歩はめんどうなんである。続かない。
    鍼灸という虚構体系があって、鍼灸の先生がニコニコいい話をしてくれて、そのために歩く。そういった全体として、民間療法が成り立つのだ。
    じゃあ、「鍼灸じゃなくてもいいじゃないか」。その通り。それ以外でもっと有効な案があれば、それでいい。
    たとえば、いろいろな人が気楽に参加できるコミュニティがあって、おばあちゃんがニコニコやってきてくれる場があれば、それでもいい。ぼくがやっている電書フリマも、大きく言えばそういうことのためにやっている。
    こういう「効く」は個別の問題だから、上に書いてあるようなテストでは排除される。もちろん「西洋医療ルールで効く効かないを判定しました」というのなら、それでいい。
    でも、民間療法チームからみれば「公平」じゃない。
    しかも、“効くか効かないか、それだけだ”というなら、「効く」んだから。おばあちゃんは、鍼灸に行って、調子よくなっちゃうんだから。

    ということを、まあ、twitterでつぶやいてやりとりしたのがtogetterにまとめられている。西洋医学VS虚構体系(←大雑把です)論議だ。


    あとは蛇足。
    鍼灸とホメオパシーを一緒にするなという反論ももらった。でも、鍼灸は、麻酔とか筋肉の緊張を解くとかの一時的効果あるというエビデンスが出てるだけで、いわゆる一般的な民間療法でやってる鍼灸は、そういうエビデンスがないらしい(あるなら教えてください)。
    (でも、まあ、一時的効果があれば、それプラス虚構体系のおまじないで、そうとう慢性的な諸症状みたいなのは軽くなるんだと思う)

    と、同時に、民間療法としてのホメオパシーを勘違いしている人も多くて、そこで反論してくる人もいる。
    偽科学批判が好きな人は、「西洋医療を受けちゃダメ」とか言う極端なホメオパシーばかり例にあげるが、イギリスでは健康保険が適応されていて(今のところは)、国家資格もある。大学で教えてたりホメオパシーマークのついた牛肉があったりする。レメディとか呼ばれる砂糖玉が有名だけど、ふつーのお薬も出すみたい。

    まあ、ちゃんと調査して書いたわけじゃないので、間違いがあるかもしれない。それは指摘してください。

    でも、考え方そのものは、そんなにズレてないと思う。
    いや、もちろん極端な民間療法はダメだと思うよ。西洋医療うけちゃダメだとか、この療法だけを信じろとか。それで「失われなくていい命」が失われたりするのはイヤだ。
    だけど、極端なものだけを取り出して、それ以外の中庸なうまくいってる「当人が効くと感じている」ものも、いっしょくたにして叩くというのは、それこそ極端な姿勢だと思う。

    追記。
    指摘を受けて、蛇足の部分、改稿しました。
    うーん。ちゃんと説明しても、話題が大きくなると、誤解する人は一定数出てくる罠になりつつあるなー。
    繰り返すけど、極端な民間療法を援護するつもりはいっさいないです。ぼく自身、ホメオパシーも鍼灸もやるつもりもないし、薦めるつもりもありません。
    また分を超えているものを分を超えていると指摘することは大切だと考えます。
    2010.07.02 Friday

    KINGJIM卓上メモのマメモとデジタル名刺ホルダーピットレックDNH10

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      『KINGJIM 卓上メモ「mamemo(マメモ)」』、いいなーこれ。
      電子手書きメモ、8月6日発売である。
      思いついたときにすぐメモ可能なように画面タッチですぐ起動。メモは最大99枚、自動保存。電池交換時もメモ消えず。
      書いたメモにToDo(日時アラーム)設定もOK。
      amazonで4,980円。これは、いい。
      さすがKINGJIMらしい(『ポメラ』大好き)新製品。

      追記。
      「Boogie Board」(公式)をtwitterで教えてもらう。電子黒板! 欲しい。
      でも、ここまできたら、『おえかきせんせい』でいいんじゃないかという罠!

      『KINGJIM デジタル名刺ホルダー「PITREC( ピットレック)」 DNH10』、内蔵カメラで名刺撮影保存、OCRで検索可能。microSDカードに保存。こちらもすごい。値段が2万円超えなのでちょい悩むけど。
      2010.07.01 Thursday

      父母へのプレゼントにデジタルフォトフレーム

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        父の日のプレゼントは、『Transcend デジタルフォトフレーム TS2GPF730』にした。
        「おまえたちの写真がないから送ってくれ」と言われていたのだが、考えてみるとプリントしている写真がない。
        メールするという手もあるが、きっと「そんなんじゃなく写真で送くれ」と言うだろう。
        デジカメデータもプリントできるんだろうけど、やったことなくて、なんだかめんどう(簡単なんだろうけど)で、ずるずる。

        ということで、父の日のプレゼントで、フォトフレームを買って、それに「おまえたちの写真データ」を入れて送ろうということに。
        使いやすさと大きさと値段の手頃なものをということで、あれこれセレクトして『Transcend デジタルフォトフレーム TS2GPF730』を購入。
        前面にボタンがなくてスッキリしているのがいい。ボタンは背面にある。
        操作も簡単。
        基本はスライドショーモードしか使わないだろうから、それなら操作に迷うこともない。
        写真データの移動も、PCに接続してドラッグ&ドロップでコピーするだけだった(USBメモリとか他のメディアでも移行できるみたい)。説明書を見なくても、だいたい使える。(念のため、電話で説明sるため自分のところでも説明書を見れるようにデジカメで撮っておいた)

        自分では使う気もなかったが、実物を見ると案外いい。自分の部屋にも欲しくなる。撮ったいろいろな写真を入れて置いておくのは楽しそうだ。
        (紙飛行機を飛ばしたときの写真を数枚入れたら、ゆっくりのコマ送り連続写真になって、けっこう楽しかった。そういう組み写真イメージの置物ってなんか、いい気がする。カフェとかにも置いてあると和むだろうな)

        デジタルフォトフレームTS2GPF730公式サイト
        2009.08.18 Tuesday

        「超能力学園Z」『Yの悲劇』その他のいろいろ

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          nakagoo1■ナカゴー、稽古の日々。台詞は憶えるだけじゃだめで、思い出さずとも言えなくちゃいけないのだった。あう。→「劇団ナカゴーの新作「超能力学園Z」に米光が」

          ■次回「読みのレッスン」最終回。『Yの悲劇』を読む。角川文庫バージョンを読みなおしはじめる。何度読んでもおもしろいな。というか何度も読むとおもしろい。この小説はただのパズルじゃない、人の多様性についての物語だ。

          『ゾンビーノ 』の主人公が米光に似ていると、ナカゴー主催の鎌田くんが言うので、観る。ゾンビの人肉欲を抑える首輪が開発されて、ゾンビがペットというか奴隷となっている世界。映像は古き良き60年代アメリカのドラマ的なくっきりした色づかいで、わあ、考えようによってはえげつない皮肉たっぷりの映画でした。

          ■最近聞いているのはサザンオールスターズ『熱い胸さわぎ』。初めて自分の金で買ったアルバム。1978年だよ31年も昔、まだファミコンがない世界で、こんな音楽を聞いていたのか14歳の俺は。今聞いても、懐かしいというより新鮮であることに驚く。うあは、すごいわこれは。

          『織田信奈の野望』「信長は女の子だった!」と、萌え戦国武将だったり、
          『這いよれ! ニャル子さん』「いつもニコニコあなたの隣に這いよる混沌、ニャルラトホテプです」と、萌えクトゥルフ神話だったり、
          ライトノベルの萌えも多様化細分化しておるな。
          2009.08.07 Friday

          ご用の方は内線を

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            なんか打ち合わせとかで、会社さんに行くと、そこには電話機があって、「ご用の方は内線×××へ」とか、担当者名と番号の対応表が貼ってある。
            で、かけると、少々お待ち下さいと言われて、少々お待ちする。

            というシステムが、ここ数年で、とてもひろまっていていると思うんだけど、
            これって、いつぐらいからだったろう?

            さして、気にもしていないし、悪いとも思わないけど、
            そのなかで「人と人との触れ合いを」とか言われると、あれ?と思わないでもない。

            業種にもよるのかな?
            2009.06.23 Tuesday

            4ビットマイコンとポメラと花嫁

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              とりとめもなく。

              『大人の科学マガジン Vol.24』公式)が4ビットマイコン!
              4ビットのマイクロコンピュータが付録。出力は数字LEDと7つのLEDランプだけ。サウンドもビープ音のみで音階を。命令の入力は16進のキーだけで行う。CPUはクロック周波数4MHz。
              プリセットプログラムとして、電子オルガン・自動演奏・音階当てゲーム・もぐらたたきゲーム・テニスゲーム・タイマー・モールス電文の自動発信。
              生徒1人1台持ってもらって、授業で使いたいなー。
              これぐらいの基礎からやると、すごく納得した感覚をもってコンピュータを使えるんじゃないか。

              山形 浩生『新教養としてのパソコン入門 コンピュータのきもち』“著者がまだ8ビットのコンピュータをいじっていた数十年前から現在までの歴史をたどり、どうしてコンピュータが「こんなにめんどうでわかりにくいのか」を、豊富なエピソードとともに書きつづっている”本もあわせて読むとよい。

              『ポメラ』欲しいなーオケがいっぱいになって溢れてきた。買ってしまうかも。

              『ScanSnap S1500』欲しいなーオケも、いっぱいになりつつある。

              『コンピュータ・グラフィックスの歴史 3DCGというイマジネーション』
              “「それまでまったく存在していない技術」はいかにして巨大産業に発展したのか?コンピュータ・グラフィックスという巨大なイマジネーションをカタチにしたパイオニアたちの仕事を紹介。CG、映像技術、VFX、IT技術、グラフィック・デザイン、モーション・グラフィックス、アニメーション、立体3D映像に興味のあるすべての学生、ファン、プロフェッショナル必見。”

              ゾンビ好きの友人が「『死後一ヶ月の花嫁』なら観たい」とつぶやく。
              2009.06.13 Saturday

              相対性理論特集やらニャル子さんやら

              0
                『STUDIO VOICE 2009年 07月号』
                「相対性理論」特集で、ボーカルのやくしまるえつこ朗読CDつき。
                うはーん。
                相対性理論『ハイファイ新書』
                相対性理論『シフォン主義』にLOVEずっきゅん


                廃墟写真の名著『最期の九龍城砦』のDVD付きバージョンが出た『最期の九龍城砦【完全保存版】DVD付き』
                DVD付きか。
                DVD付きかーうはーん。

                「いつもニコニコあなたの隣に這いよる混沌、ニャルラトホテプです」逢空 万太『這いよれ! ニャル子さん』。萌えクトゥルフ神話!? 買った! まだ読んでない。

                鴨下信一『日本語の学校』の最初の章を読んで、あまりにもすばらしいので、以後はちゃんとレッスンを実践しながら読もうと決心。声に出すということや、読むということ、伝えるということ、名文ということについて考えている人はぜひ一緒に読みましょう。

                ミロラド・パヴィッチ『帝都最後の恋 占いのための手引き書』
                章順にも読めるし、各章が大アルカナの寓意画一枚一枚に対応していて、タロットを広げながら、出たカードに対応する章を読み進めることもできる本。
                でも、読まねばならぬ本がたくさんあってすぐには読めぬから買わないでもいいと決意していたのに、書店で魔術師の章を読んだらいてもたってもいられず購入。“「人は皆、二つの過去を持っている」魔術師は答えた。「一つの過去は『上り坂』と呼ばれるもので、この過去は誕生の時から人と一緒に育ち、死に向かって進む。もう一つの過去は『下り坂』と言われ、これは人からその誕生へと戻っていく。この二つの過去の長さは同じではなくてね”
                2008.08.18 Monday

                映画の見方に正解などない

                0
                  「映画の見方における「正解」について:ハックルベリーに会いに行く」をおもしろく読みました。

                  映画の見方に「正解などない」というのが、ぼくの立ち位置です。少なくとも大人になったら、正解とか不正解とか、そんな学校で強制される「点取り虫」思考で映画を見るのはつまらないと考えます。

                  「虚心坦懐」に見るのが正解だと上記テキストは主張しています。
                  “また、もし「観る人」が「虚心坦懐」に映画に接しようとした場合、作り手の意図や思惑というのは、かえって余計なものとなるおそれがあります。それは、予断やフィルターを「観る人」に与えてしまうからです。

                  だから、もし本当に「虚心坦懐」に見ようとするなら、そうした考えはシャットアウトするのが正しいのです。そうした予断やフィルターを閉め出した上で、映画と自分が一対一で向き合うのが、一番「虚心坦懐」な見方です。”
                  虚心坦懐といいうのは、“心になんのわだかまりもなく、平静な態度で事にのぞむ”という態度です。

                  でも、無理です。
                  禅僧じゃないんだから。
                  そもそも「宮崎駿のアニメだから見に行こう」ということそのものが予断です。ワクワクしながら見に行くことが平静な態度じゃありません。

                  虚心坦懐に見ることを「正解」だとするaurelianoさんが、幾度も作者の意図を予断として使っています。
                  “もし宮崎駿監督がそういう意図のもとで――つまり解釈を拒否するつもりでこの映画を作ったのなら、それはひどく傲慢なことだなと思いました。”
                  “宮崎駿監督が物語への解釈を拒否してしまったことは、少し傲慢ではないのかと感じました。”
                  傲慢な絵語りの映画「崖の上のポニョ」感想その2
                  作者の意図を予断とした感想です。「もし」をつけて予断であることを自身で強調しています。

                  “このお話が、練りに練られ、そして考えに考えて作られた”常識を疑わせるための映画?「崖の上のポニョ」感想
                  というのも、勝手に妄想した、もしくは何かの情報から得られた予断です。考えずにできる天才かもしれないし、ぱっとひらめいたのかもしれないのです。いや、作者の意図や思惑を斟酌しては不正解だというのなら、考えに考えていようが、考えてなかろうが、そんなことを言及することが予断となり、虚心坦懐ではなくなります。

                  “もう一つ、作り手の意図や思いを汲み取るのが「不正解」だという理由は、「作り手というのは、何も考えてない場合が多い」というのがあります。また、よしんば考えていたとしても、作品というのは、そうした作り手の意図や思惑を越えてほとんど自律的に成立していくものですから、それを斟酌するのは無意味だということもあります。”
                  とも主張されています。その根拠は、
                  “野坂昭如はこの作品を執筆していた当時、他にも小説やコラムなどの仕事を何本も抱え込んでいたと後に語っている。ひたひたと忍び寄る締め切りと何人もの担当者とのやり取りで受けるプレッシャーに晒され、まさに地獄のような日々の中でなんとか原稿を仕上げていた大変な時期だったという。また、孫娘の学校での宿題の「火垂るの墓の作者は、どういう気持ちでこの物語を書いたでしょうか」という問いに対し、「締め切りに追われ、ヒィヒィ言いながら書いた」と答えたと、テレビ番組で発言した。”
                  というエピソードです。
                  作り手の意図や思惑を汲み取るのが「不正解」だと主張するための根拠に、作り手の発言を使うのは、自己矛盾でしょう。
                  野坂昭如が「締め切りに追われ、ヒィヒィ言いながら書いた」というのは照れである可能性や、そのほうがおもしろいから、という可能性だって考えられます。本当は、泣きながら書いたかもしれないではない……と考えることだって可能です。いやいやそのまえに、作者の意図や思いを斟酌しちゃだめなんだから、どう発言しようと、それを斟酌しちゃいけないのではなかったのか。

                  このへんでやめましょう。
                  ぼくは、作者の意図や思いを斟酌しても、しなくても、いいと考えます。
                  解釈そのものが、説得力を持って対象を解き明かしていれば、それは素敵な解釈だと思います。

                  また、作者の意図や思惑を斟酌しないというテクスト論的な立場を否定するつもりはありません。でも、それは、他の人の感想を「不正解」だとするような、ただひとつの「正解」ではなく、それを選んだ人の立ち位置であるだけでしょう。

                  余談。
                  でも、たとえば、宮崎駿の演出意図や想いが書き込まれた絵コンテ『崖の上のポニョ 』を見ると、さらに作品を楽しむことができたりします。“作り手の意図や思いを汲み取り、それを自分の解釈より上位に置いてしまう”のはたしかにつまらないでしょう。でも、“シャットアウトするのが正しい”わけじゃない。作者の意図も、受け手が素敵に解釈すればいいし、受け手が楽しむための素材にしちゃえばいいんです。

                  余談。
                  作者の意図に支配されたものとして文章を読むのではなくて、文章そのものだけを読むべきだとする思想を「テクスト論」といいます。石原千秋『『こころ』大人になれなかった先生 』が読みやすくておもしろくてオススメです。(こどもそリンク:『『こころ』大人になれなかった先生』
                  2008.08.07 Thursday

                  不適切様、管理人でしたら削除願います

                  0
                    「管理人様、不適切でしたら削除願います」に、たくさんの意見をもらったので、リアクション。
                    「長文失礼いたします」とかもそうだけど、日本人的な作法と言うか予防線と言うか空気の使い手。コミュニケーションに徹底的に論理性を求めるのも齟齬の元だと思うけどなあ。
                    礼儀作法なのかもなー。「つまらないものですが……」と一緒で。 / 奥ゆかしさってやつ。

                    徹底的に論理性を求めたりするつもりはこれっぽっちもない。
                    「つまらないものですが……」とか「長文失礼いたします」ってのは、自分の責任を投げているわけじゃない。
                    でも「管理人様、不適切でしたら削除願います」って自分の責任を丸投げしてる。「悪口を書くけど、腹が立つなら読まなかったことにして」に近い感じがする。スルー力を強要する感じに。
                    っていうか、そもそも「つまらないものですが……」とか「長文失礼いたします」って言うのは、知ってる人でしょ! 知らない人がたずねてきて、「つまらないものですが……」って大きな箱を置いて去っていっても、「奥ゆかしいな」「礼儀作法がなってるな」「日本らしいな」と思うのかな。

                    「責任丸投げ」に関しては、詳細に考察してくれたところがあって、「削除しない=管理人も認めた、という誤解」Over100が、とても興味深い。
                    そう、削除するのって、「不適切なら削除すればいいじゃん」っていうほど、簡単で、単純な行為じゃない。
                    書き込みを削除するのって、結構面倒だし大変なものです。削除というアクションを選んだがために、興味のない論争に巻き込まれたり、逆恨みされたりするリスクもある。良い人や良い人を演じたい人などは、書き込んだ本人が怒ったり悲しんだりすることを想像すると、気に入らない書き込みであっても削除に躊躇してしまう。そもそも疲れて帰ってきたのに、いきなり「さあ、削除するか残すか選べ!」と強要されるとグッタリする。

                     自分も掲示板などで同じ苦労をした経験がある人ならば、おそらく「削除するってのも結構大変なんだよね」と理解してくれることでしょう。でも読者の皆がそういう経験を持つ人ばかりではないし、読むだけの人とかには特に理解されづらいところです。そしてそういう人のほうが圧倒的に多い。
                    (削除しないと管理人が認めたと誤解されるという指摘も含めて)それぞれの立場で、それぞれの思惑がズレているところが、この定型文の困ったところ。そして、使ってる人が、そのところを何も考えずに「このフレーズをコピペしておけば許される」と思っているところが、嫌なところです。

                    こどもそ内関連リンク
                    管理人様、不適切でしたら削除願います
                    「ありがとうと言う人が大嫌い」の謎
                    デスアイサツとゲーム脳、知らない人に挨拶したら死ぬ世界
                    ネットにはびこる野次馬の口調
                    「本の雑誌」、和田伸一郎『メディアと倫理』
                    「コミュニケーション」という名のカードゲームなのか
                    メディア時評「わんちゃん危ないワクワク社会と画面の中への出入り」
                    すぐに野次馬になるネットユーザー
                    『ケータイ小説的。』の衝撃

                    関連書籍リンク
                    和田伸一郎『メディアと倫理 画面は慈悲なき世界を救済できるか』
                    速水健朗『ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち』
                    大平健『やさしさの精神病理』
                    森真一『ほんとはこわい「やさしさ社会」』
                    2008.08.06 Wednesday

                    想像力があるかぎり世界は完成しない

                    0
                      『オールアバウトシュヴァンクマイエル』に載っていた「想像力があるかぎり世界は完成しない」という言葉が好きだ。
                      来日したときに、シュヴァンクマイエルが残していった言葉。

                      『ヤン・シュヴァンクマイエル コンプリート・ボックス』、DVD10巻、限定生産。08/10発売。
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